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生活者に“記憶”され、選ばれるブランドに変える新戦略

ライター:加藤 賢大

公開日:2021年05月17日 | 更新日:2023年10月23日

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ブランド管理という点で、ブランディングの方向性を具体的に示す重要な指針となるのが「想起集合(evoked set:エボークトセット)」です。
今回は、圧倒的に市場浸透率が高いブランドに対する戦い方、「カテゴリーエントリーポイント(CEP)」を用いた戦略について、実際の調査結果をもとに詳しくご紹介していきます。

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思い出せるブランドは2つまで⁉︎

ブランドを浸透させるための施策はさまざまありますが、きめ細やかなマーケティングを実施するうえで重要な指標となるのが「想起集合(evoked set:エボークトセット)」です。

Evokeには「呼び起こす」といった意味があり、想起集合は簡単に説明すると、生活者がものやサービスを購入する際、選択肢として思い出されるブランドのことを指します。

ブランドとして名前が知られていて、ある程度の情報やイメージが共有されていたとしても、購買時に選ぶ選択肢に入っていなければ意味がありません。そのためにはまず、このエボークトセットに入ることが必要です。

しかし、ネオマーケティングが早稲田大学商学学術院長で日本のマーケティングの第一人者である恩藏直人教授と共同で行っている調査で、興味深い事実が明らかになりました。

それは、いかなるジャンルでも生活者が購入行動をする際、頭に思い浮かべるブランド=エボークトセットは2個以下である、ということです。

実際に考えてみてください。
クルマを買うとしたら、どのメーカー?
スーパーでヨーグルトを買うとき、どのブランド?
スポーツドリンクを飲むとしたら?

いくつ、思い浮かんだでしょうか? たくさんのブランドが思い浮かぶ方も中にはいるかもしれませんが、多くの人が瞬時に思いつくのは、たったの2個以下なのです。
そのカテゴリーにおいて、「買おうかな」と記憶されているブランドのベスト2に入らなければ、実際に購入される確率は格段に下がる。
残念ながら、2位未満ではダメなのです。

エントリーポイントをずらすという戦略

では、3番手、4番手、5番手のブランドはどうしたらいいのでしょうか? マーケティングを強化して、1位2位を獲得できるまでブランドを育てる? それは、正直、おすすめできる戦略ではありません。

エボークトセットは流動的なものですが、一度、記憶されてしまったものを刷新させるのは、非常に困難です。がんばってマーケティングしたところで、1位のブランドもプロモーションを展開します。差が縮まる可能性がないとはいいませんが、トップを奪うことができないまま、時間とコストばかりがかかってしまうことになるでしょう。

『ブランディングの科学』(朝日新聞出版)でも指摘されていますが、市場浸透率が高いブランドはリピート率も高い。ナンバーワンブランドが高いロイヤリティを掴んでいるために、2番3番はリピート率も市場浸透率も低くなるものなのです。
そのカテゴリーでトップブランドであったものは、20年後もトップブランドである可能性が高いというのは、過去の結果からも明らか。同じマーケットで戦うと、一番手がどうやっても強く、それを逆転させるのは極めて難しいのです。

もちろん、3番手、4番手に甘んじろといっているわけではありません。
戦い方はあります。新たな「カテゴリーエントリーポイント(CEP)」を構築し、そこで1位を狙うのです。

カテゴリーエントリーポイントってなんだ?と思うかもしれません。カテゴリーエントリーポイントは「記憶からブランドを呼び起こすヒント」のことです。

たとえば、「スポーツドリンクを飲むとしたら、どのブランド?」と聞かれたとき、おそらく、「アクエリアス」や「ポカリスエット」といった商品が思い浮かぶでしょう。
「スポーツのときに飲むもの」というカテゴリーエントリーポイントでは、アクエリアスやポカリスエットが強く記憶されているわけです。

では、「脱水症状のときに飲むもの」というエントリーポイントではどうでしょう。
もちろん、アクエリアスもポカリスエットも出てくるでしょうが、「経口補水液OS-1」を真っ先に思い浮かべる人も少なくないはずです。

エントリーポイントを少しずらすことで、記憶から呼び起こされるブランドは変わります。
新たなカテゴリーエントリーポイントで1番をとる。こうした戦略がマーケティグ上、重要だとネオマーケティングは考えています。

「エボークトセット調査」とは?

ブランドを呼び起こすヒントであるカテゴリーエントリーポイントは、たくさんあります。ヒントになればなんでもいいわけですが、もともとそのブランドが持っているものを強化していくことがいちばんの近道です。それがわかるのが、エボークトセット調査です。

エボークトセット調査は、前述の恩藏直人教授とネオマーケティングとの共同研究によって開発した調査スキームです。

具体的には、生活者にそのカテゴリーを購入する目的(利用目的)に加え、「思い浮かぶブランド(知名集合)」「購入を検討するブランド(想起集合)」「誰かにすすめるブランド(推奨集合)」を順に聞いていきます。想起集合と推奨集合で1番に挙げたブランドについては、その理由も確認します。

利用目的がカテゴリーエントリーポイントの発見につながり、想起集合と推奨集合に選んだ理由と合わせて分析することで、ブランド浸透度やそのブランドを思い起こさせる理由(ブランド連想ネットワーク)を知ることができます。

※想起集合(evoked set)についてはこちらの記事を参照「エボークトセットとは? 選ばれるブランドとなるための必須戦略」

カテゴリーエントリーポイントを変えることで、どうなるか?また、新たなカテゴリーエントリーポイントの見つけ方について、実際に行ったヨーグルトのエボークトセット調査の結果を例に見ていきましょう。

「ヨーグルト(固形)」のカテゴリーにおいては、「明治ブルガリアヨーグルト」が知名集合、想起集合、推奨集合ともにダントツのトップでした。
しかし、「機能性ヨーグルト(固形)」のカテゴリーになると、想起集合と推奨集合において、「明治プロビオヨーグルトR-1」がトップとなります。

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購入を検討する際の理由から、そのブランドが連想させるキーワードを見つけることができます。これが「ブランド連想ネットワーク」です。
「R-1」の場合ですと、「免疫力」「高める」「ひきにくい」といったキーワードが出てきました。まさに、「強さ引き出す乳酸菌」「体調管理」を打ち出しているR-1のプロモーション戦略と重なります。

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細かなことをいうと、ブルガリアヨーグルトとR-1はともに明治なので、おそらく、同じ固形ヨーグルト市場でカニバリゼーション(共食い)をさけているのだと推測します。しかし、「ヨーグルト」というカテゴリーでは4位のR-1が「機能性ヨーグルト」のカテゴリーになると1位になるわけです。
これが、カテゴリーエントリーポイントをずらすメリットです。

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1位をとれるカテゴリーのつくり方

では、3位以下のヨーグルトブランドが、1位を狙えるカテゴリーエントリーポイントを探すには、どうしたらいいのでしょうか?
それは、ヨーグルトの購入(利用)目的と、すでに持っているブランドのイメージ=ブランド連想ネットワークとを紐付けて考えていきます。
ヨーグルトは「整える」「朝食」「小腹」「リラックス」といった言葉とともに記憶されています。あるブランドが「腸内フローラ」といったイメージを強く持たれているとしたら、たとえば、「腸内フローラ」と「整える」をリンクさせ、そこに注力したマーケティングを行う……というように考えていくわけです。

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カテゴリーエントリーポイントは、ターゲット(属性)や成分、サービスなどからも見つけることができます。また、気分や場所、シーンなどとブランドを紐づけることができれば、「元気になりたいとき」「朝食時」など、シチュエーションで選ばれるブランドへと育てることができます。

すでにもっているブランドのイメージを活かしながら、優位な立場で新たに勝負できるカテゴリーを見つけていくのです。独自性の強化といい換えることもできます。

カテゴリーエントリーポイントをずらすメリットは、これだけではありません。
新たなカテゴリーエントリーポイントで1位をとると、別の連想ワードでも1位をとれる可能性がでてくるということです。
たとえば、「ヨーグルト」というカテゴリーで1位をとっているブルガリアヨーグルトは、機能性ヨーグルトでも上位にランクインしています。おそらく、「口当たりのいいヨーグルト」というカテゴリーポイントでも、上位にランクインするでしょう。
選ばれる機会をさらに広げていくことができるわけです。

まとめ

繰り返しになりますが、既存のカテゴリーでトップでないものがとるべき戦略は、カテゴリーエントリーポイントを変えて、別のところで1位をとるということです。
すでに説明したように、圧倒的な横綱がいるときに、相手の土俵で真正面から戦うのは無謀です。無理して2位以内を狙うよりは、軸を変えたほうが勝率は格段に上がります。

ブランドとは、体験とか評判によって生活者が記憶したモノやサービスのイメージのことです。重要なのは、ブランドがもっている言葉――イメージをいかに強く生活者に持ってもらえるかにあります。
そのブランドがすでにもっている言葉、イメージを活かしながら、新たなエントリーポイントで勝てるブランドを育てていく。エボークトセットという考え方は、ブランド管理上、今後、重要な指針となっていくはずです。

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加藤 賢大
WRITER
加藤 賢大
マーケティング業界歴10年超。2011年よりネオマーケティングに入社。リサーチのみならず、WebマーケティングやPR、ニューロ・IoTなど、各種ソリューションを駆使して顧客の課題解決に尽力。 武蔵野美術大学と共同で新サービス開発及び論文発表、日本マーケティング協会主催のマーケティングAI研究会に参加するなど研究活動にも従事し、幅広い業務に携わる。

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